汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)

 西園寺さんは、この状況を、楽しんでいる?
 しかも、ゲームみたい……だって?!

 馬鹿くんもこの状況に対してワクワクしている様子だったけれど、それとはまた違う……潜在的な狂気を彼女からは感じた。


「あら、おかしいですか? 私のような世間知らずの嬢が、そんなことを言うのは」

「いや、そこまでは言ってないけど……意外だとは思ったよ」


 そう答える火神くんの顔は、引き攣っているようにも見えた。周りのみんなも西園寺さんに引いているのかな?大丈夫、その反応が普通だと、僕は思うよ……。

 けれど、西園寺さんは。


「まあ、正直者ですこと」


 ただひとり、クスクスと笑う、だけ。

 申し訳ないけど、僕は笑えないよ。この状況下で笑えるということは、本当にゲームを面白いと思っているのだろうか。それとも、この状況がまだ、危機的なものだと理解できていない?

 自分から狼谷くんを縛るように発案し、他のクラスメートにそう命令したのに?……そして何より、目の前には、上杉くんの遺体があるというのに。

 普段、西園寺さんとは日常会話をすることがなければ、挨拶すらまともにしたことも無いけれど、今の彼女を見て、よりいっそう、何か会話をする機会がなくなったように思えた。彼女から発せられる恐怖に耐えられる自信がない。

 それに、彼女のそばにいるメイドの水無さん。彼女からは、誰も西園寺さんに近付けさせまいという意思が感じ取られる眼光の鋭さ。オーラ。これまた潜在的な何かを感じる。

 ……そういえば、西園寺さんも水無さんも、学校にいる間はずっとそばにいて、第三者を交えて会話をしていることってあまりないような……?

 とにかく、ふたりからは埋まらない溝を感じた。よっぽどのことがない限り、ふたりには話しかけたくないな……。
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