汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
ふう、と溜め息を吐いた僕は、もう一度上杉くんの遺体に視線を落とす。痛々しい彼の姿や、狼谷くんの言動を思い出すから見たくはないんだけれど、僕の意識は気になるのかついチラチラと見てしまう。
……見てしまう。
……上杉くんの、遺体。
「……あっ」
彼の遺体を見ていて、僕はふと思い立った。
呟くや否や早急に立ち上がった僕を、不思議そうに見つめる黒月くん。周りのみんなも普段行動することがない僕のことを、不審なものを見る目で見つめる。
そんな彼らの視線を無視し、僕は迷うことなく武器が置かれている台を隠していた布を取り上げると、もう動くことのない上杉くんに近付き、隠すようにして布を上から被せた。
「大和くん?」
「……今、この場にはこんなものしかないけど……野ざらしにするのは、可哀相だと思って」
野ざらしにしてしまうくらいなら、思わず彼の遺体を見てしまうのなら、見えないようにしてしまえばいい。上杉くんも、自分の痛々しい姿を周りのみんなに見せつけようだなんて思っていないはずなのだから。
本当はもっと、ちゃんとした綺麗な布が好ましかったんだけど……この状況下なら仕方ない、よね。ごめんね、上杉くん。
「……大和くんの優しさ、ちゃんと上杉くんは感じ取っていると思うよ」
そう言った黒月くんは、優しく微笑みながら僕の頭をポンッと撫でてくれた。何故だろう、不思議と安心する。黒月くんこそ優しいと、僕は思うよ。
──すでに殺人に手を出した者と、死んでしまった者がいるこの狭い密室の中……。
僕らの気持ちや意思なんて関係なく、犯人が仕掛けた〝ゲーム〟はもう、始まってしまっているんだ……。