晴れ、のち晴れ
「え、俺の知り合いの…名前は?」
そういえば、葵の名前は聞いていたが、あたしの名前はちゃんと名乗っていなかった。
「七篠梨羽(ななしのりう)です」
「お兄さまが女の子を連れ込むなんて、今日はお赤飯ね」
「連れ込んでないっての」
葵のつっこみを無視して、妹は続ける。
「梨羽さん、顔と頭と運動神経以外、これといってとりえのない兄だけど、仲良くして下さいね」
「は、はあ…」
いま、顔と頭と運動神経がいいのって、それだけで十分なんじゃ…。
「変なことされそうになったら、遠慮なく殴ってくださってかまわないから」
「しねぇよ」
葵の妹は、お嬢様といった風のおっとりした笑顔で辛辣なことを言い、二階へと上がって行った。
疲れたような顔で葵はそれを見送った。