晴れ、のち晴れ

葵のシャツはあたしには大きかった。だけど、袖を折ってしまえばなんとか着れるし、濡れたままでいるよりましだった。

「先生へ言いにいけよ」

「なんで?」

助けてくれるなんて保証ないのに。

「言いにくいんだったら俺が言ってやるけど」

そう言った葵は、あたしの手を取って学校の方へ引っぱった。

あたしは慌てて力いっぱい抵抗する。

「いい、いいから、本当にっ」

「…なんでそんなに嫌がるんだよ」

「大丈夫だから、あたし…」

「俺、夢香がそんな目に会っていたら嫌だけど」

「あたしは夢香じゃない」

「そういうことを言ってるんじゃないっ」

葵が声を荒げた。怖いほどに真剣だ。


< 60 / 119 >

この作品をシェア

pagetop