Focus

品川さんは頷いて、二部のアルバムを差し出した。

「畑違いのブライダルとはいえ熱心にカメラを構えて撮影していらっしゃいます」



同じようなアルバムでありながら、開いた印象は全く違う。

明るく華やかな笑顔溢れる式と、しっとりと上質な時間を楽しむ落ち着いた式。
写真を撮った場所から、シュチュエーションまで全く違い、ブライダル写真の型などないのだと思い知らされる。それでもなんとか共通点はないのかと探すと、幾つかのパターンが見えてきた。



山男だと聞いていた割に、繊細なカットをものにしている。新郎新婦への、スタッフからの気遣いに溢れた仕草が収められた一枚には温かな気持ちが沸き起こった。



「写真を見ると、あなたがたスタッフと山並さんの信頼関係がよくわかります」



ちらりと品川さんも写りこんだ写真では、彼女もとてもいい笑顔を向けていた。
白い肌をわずかに染めて品川さんも頷いた。



「私共も山並さんの腕を信頼していますし、彼以上のカメラマンを探すことはできません。彼もそのことを心配していたのですが、お引き受けいただけますでしょうか」



期待をこめた視線を無下にすることはできない。

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