いい加減な恋のススメ



小田切先生も、今思えばあんなに急な返事をよく受け入れてくれたと思う。あれは勢いだと言ったら勢いに入るだろう。ただ幸澤先生へのこのぐちゃぐちゃになった気持ちを消すために他の人と付き合うなんて、なんて私は狡いのだろうか。

なのに彼はそんな私の理由も聞かずに了承してくれた。まるでもう分かっていたみたいに。

言ってしまえば、今の私は高校生の頃、昇降口で皆川さんに会ったときの気持ちと同じようなものを抱えている。
あの何とも言えないぐちゃぐちゃになってしまった気持ち。嫌だって言うことも出来なくて、ただ自分の気持ちを捩じ伏せて彼女の言葉を聞いてきた。

その後、まるで気持ちが削がれたように真っ白になってしまうのも。


「あ、ギリギリだ」


川西先生の声に私はピクリと反応する。目の前を見れば確かに廊下を歩いている小田切先生がいた。
暫くするとクラスの男子だろうか、生徒たちに連れられて何処かへ歩いていってしまった。

小田切先生は私と違って人と距離を取るのが上手いな……


「いーちゃんって、ギリギリの何処が好きなの?」

「……」


何処がって、私はその閉じた口を開くことはなかった。



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