いい加減な恋のススメ



だから、と彼女は続ける。


「もし私が彼女じゃなかったら、普通の女の子で律と関わりがないところからもう1度始めてみて、それで律が私のことを好きになってくれるなんてこと絶対ないと思うの」


絶対と言い切った彼女に俺は酷く納得してしまった。
彼女が言ったようにもし目の前の女が自分の恋人でなくて、ただの同僚とかだったとする。それでもう1度彼女に自分から恋をすることなんて多分、いや、ないと思った。

それにこうして彼女から別れ話をされて、「別れたくない」なんて泣き言吐いて彼女にしがみつこうとも思わない。
俺は自分の恋人を愛してはいなかった。

服を着た彼女はこっちを向かないまま肩を震えさせていた。次から聞こえてくる言葉には少し塩分が含まれた水の匂いがする。


「私じゃ、律のこと幸せに出来ないと思う」

「……」

「私は律といられて幸せだけど、だけど律は私といても1番の幸せにはなれない」


きっと律は私じゃない、と涙ながらに言う彼女を後ろから抱き締めてやることも出来ない。
彼女に言われてから、この別れは仕方がなかったのかもしれない。


「律は、ちゃんと好きになったこと一緒にいる方がいいと思う。私も応援する」

「そんな簡単に出来るもんでもねぇだろ」

「分からないよ、そういう気持ちって突然生まれるものだから」



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