いい加減な恋のススメ



そして荷物を持つとやっとこちらを向いた。


「じゃあね、律。頑張ってね」


そんなの、別れるときに言う台詞じゃねぇだろ。だけど彼女は本当にその言葉を最後に残して部屋から出ていき、そして戻ってくることは無かった。

何処かで勘付いていた。きっと彼女は俺に引き留められたかったのではないかと。
俺が出ていこうとする彼女を追い掛けて抱き締めて、「好き」とか「愛してる」とか言ってキスをすれば、彼女はこれからもずっと俺の側にいるのではないか。

それを分かっていて、俺の体は動かなかった。

俺が思うに、彼女にはもう俺以外にも男がいるのだと思う。俺のような男ではなく、ちゃんとしてヤキモチも妬いて、彼女自身を愛してやれる男が。
彼女がそっちの男を選んだだけだ、分かっている。


「(嫉妬とか……)」


妬かなかった、そんな感情生まれなかった。だから悲しませた。
人との付き合いってこんなに面倒くさいもんだっけ。てか俺結構一途にアイツのこと思ってたつもりなんだけどな。

だけど、別れてしまった理由は先程の彼女の言葉全てだ。

白い煙が揺れて再び消えていった。
それから俺は人に好意を持たれることを苦手視するようになった。



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