いい加減な恋のススメ
すると、
『泉?何、どうしたの?』
私が持っていたスマホから杏の声が聞こえてくる。声が彼の耳にまで届いているのか、自然と私たちの視線はそれに注がれた。
『ていうかまた幸澤って聞こえたんだけど。やっぱりいたの?』
自分の名前が出たからか、彼はピクリと反応すると私の方に視線を戻して「誰?」と杏には聞こえない声で私に問う。
「杏です、宮田杏」
「……あぁ、お前ら仲良かったもんな」
「……あ、」
彼は私の手からスマホを奪うと勝手に話し出した。
「宮田悪いな、勝手に校内歩いていてくれ。安藤を借りる」
「っ……ちょ、」
ちょっと!?、と私がスマホに手を伸ばしたのにも関わらず彼は即座に通話終了のボタンを押してしまった。
そして「ほらよ」と投げるようにして私にスマホを返すと私がそれを何とか受け取ったのを確認すると握っていた左腕を引いて校舎の方へと歩き出した。
何だ一体。何が起こっているんだ。
「く、クラスで何かあったんですか!?」
「ちげーよ」
「じゃあ何」
「何もねぇ」
「は!?」
「うっせーな!」
黙ってついてこい!、と彼は怒ったように言うと私の腕をぐいっと引いた。
何故彼が私のことを見つけに来たのか、どうして怒っているのか、何も分からなかった。