いい加減な恋のススメ



「え、」


思わず漏れてしまった声に戸惑いを隠せていないのが分かる。
いつの間にか目の前のドアは閉められていて、この部屋に私と彼が2人きり。

必然的に彼の胸元に顔を埋めるようになっていた私は今の状況が全く呑み飲めていなかった。
耳元で聞こえる彼の呼吸に体が熱くなっていく。


「こ、幸澤せんせ……」


何で何も言わないの。ていうかいきなり何?こんなことするために私のこと探しに来たの?
私のこと抱き締めて、どうするつもりなんですか。


「(ヤバい、何も考えられない……)」


ただドキドキが止まらなすぎて心臓が潰れてしまいそう。
私が体を縮こまらせると彼はその分抱き締める力を強くしてその分私と密着しようとする。
彼に抱き締められていることが嬉しすぎて、もうここで死んでも構わないと思った。


と、


「っ……」


お尻の辺りで何かがモゾモゾと動く。それが彼の手だと確信した私は「あん?」とどす黒い声を出した。


「こんの痴漢男ぉおぉおぉお!」

「っ……」


私が力の限り彼の胸を押すとそれはそれは簡単に離れたどころか、彼は力無しに向こう側へと倒れてしまった。




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