いい加減な恋のススメ
あ、と思ったがやってしまったものは仕方がない。
静かに彼の様子を見つめていたが、尻餅を着いた彼が私のことを睨み付けるかのように顔を上に上げた。
そして、
「いってーな!何すんだコラ!」
「な、何すんだはこっちの台詞です!いきなり何なんですか!セクハラで訴えますよ!」
「はぁ!?偶然に当たっちまっただけだろ?勘違いすんじゃねぇよバーカ!」
「はぁあぁ!?」
馬鹿はどっちだ馬鹿は。私が怒っていると彼ははぁと溜め息を吐いて、そして力無しに下を向いてしまった。
はぁはぁと息切れを激しくする彼に私はまさか打ち所が悪かったのではと不安になったがそういうことでも無さそうだった。
「な、何……そんなに疲れて」
「うるせーな、階段2階駆け上った後だぞ」
「それだけで!?」
「三十路の体力の無さ舐めてんじゃねぇぞ」
カッコ悪ぃ、と前髪を掻き上げるようにして呟いた彼が何故か急に可愛く見えて、私は少しずつ彼に近付くと目の前にしゃがみこんだ。
そんな私に彼は「は、」と、
「セクハラで訴えるんじゃねぇのかよ」
「っ……わ、私からは触ってないです」
「……」
私が照れ隠しに顔を逸らすと「へーえ」と呆れたように彼が言った。