いい加減な恋のススメ
私はそんな彼から視線を逸らし前を向くと、前にいる生徒たちには聞こえないほどの声で言った。
「言わないんですね、何か意外でした」
「何がー?」
「何がって……」
分かっている癖に、と唇を尖らしたら隣からクスクスと笑い声が聞こえる。
前では雨宮先生が最新機種のスマホの使い方で生徒からレクチャーを受けていた。これは時間が掛かりそうだ。
「まぁ、俺も出来れば定年退職まで教師続けてたいですから?こんなとこじゃ言わねぇよ」
「……」
「それとも言って欲しかった?安藤は俺の彼女だって自慢して欲しかった?」
「っ……」
生徒たちに聞こえないように私の耳元で囁いた彼は絶対確信犯だと思う。
私が彼をキッと睨むと勝ち誇ったような顔を向け、そしてカメラの準備が出来たという雨宮先生の方へ向いた。
と、
「死んでも言わねーよ」
そう言った彼に目線だけを向けた後、私も前を向いた。まぁ、私に迷惑が掛からなかったら何でもいいけど。
でもそれって私が幸澤先生の彼女として駄目だと言われているみたいでちょっとショックかも。
「じゃあ撮るよー」
雨宮先生が扱いづらそうにスマホを触っているのを見て自然と表情が緩む。