いい加減な恋のススメ



「僕がなにか?」

「い、いえ!別に何も!お、おだ……織田信長のことを考えていたんです!」

「あ、そうだったんですか!勘違いしちゃって恥ずかしいな」


こ、このときほど日本史専攻で良かったと思ったときは無かった。うぅ、小田切先生は何も悪くないのに辱しめちゃった。
私は「こちらこそ紛らわしいことを……」と謝る。


「あ、時間なんですよね。今行きます」


慌ててお昼御飯を片付けてベンチを立つと小田切先生は「ゆっくりでいいですよ」と優しく言い聞かせてくれた。あぁ!この気遣いだよ!この!これをあの人にも見習って欲しいんだよ!小田切先生の優しさに涙が出そう。


「あ、昨日大丈夫でしたか?あの後」

「ひゃい!?」


いきなり1番聞かれたくない話題が出たので変な声がどこからか出た。いや、私の口であることは間違いないんだけど。
私は目をキョロロと動かして明後日の方向を見た。


「ま、まぁ?なんとか。ご迷惑掛けました」

「いや、僕が側にお酒置いちゃったから」

「えぇ!?ぜ、全然小田切先生のせいじゃないですよ!」

「そう?」


そうだよ、あれは私が幸澤先生に苛ついて周りを見失ってやったことなんだし、全然小田切先生のせいなんかじゃない。って、また私そこで幸澤先生に人生狂わされてる!
私が慌ててブンブンと首を振ると目の前の小田切先生は安心したように笑った。

そして、


「よかった」


急に敬語が取れたのでこれは昨日言っていた素の方の小田切先生なんだなと理解できた。
というか、こうやって相手のオンとオフを見極められるようになるって、何かめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!



< 55 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop