わがままなキッス☆ 【短編】
「まあ、たしかに私には
関係ない事だけど…
でもホントに誰かのものに
なってからじゃ遅いんだよ…。」
少しムッとしながら
彼女は話しを続ける。
「1年の時、沙織が言ってたよ。惣太は私に感心がないって。」
『えっ…』
教科書に
数式を書き込んでいた
僕の手が止まる。
「沙織ってさ不器用な子
なんだよね。」
『……何が言いたいの?』
「んー、惣太君って
頭いいわりには、かなり鈍感?」
ニコッと不適な笑みを
浮かべた由里ちゃんは
教科書をサッと奪うと
「ありがとっ。」
そう言って教室を出た。
僕は唖然とその後ろ姿を見送る。
彼女は何しに来たんだ…?
それより
沙織が不器用で僕が鈍感??
さっぱりわからない。
まあ沙織が要領悪くておバカ
なのはわかるけど……
=ホントに誰かのものに
なってからじゃ遅いんだよ=
そんなのわかってる…。
僕の頭の中で
由里ちゃんの言葉が
何度も何度も
繰り返される。
その度に僕の胸は
何度も苦しくなった。
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