わがままなキッス☆ 【短編】

「由里もさ、なんか
惣太に気があるみたいな
態度見せてたじゃない。」


『えっ、そうだった?』


沙織は大きくため息をつく。


「ホント鈍感…」


ボソッと呟く。


「最初は惣太の事ホントに
好きになったのかと思ったけど…それはありえないから
なんか変だと思ってたら
早川君の話し聞いて…
もしかして由里も
わざとかなって思って…」


おいおい
ありえないって…
何を根拠に言ってるんだ。

そう突っ込みたかったけど
僕は言葉を飲み込む。


『早川、由里ちゃん追いかけて
行ったけど…大丈夫かな。』


「うん、多分大丈夫。
早川君もう一度ちゃんと
由里に気持ち伝えるって
言ってたから…今度は由里も」


そう言って沙織は
僕に向かって微笑んだ。
でもその笑顔は
どこか寂しそうで…

僕はおもわず沙織の腕を掴んだ。沙織は一瞬ビクッと体が震え
立ち止まる。


『沙織…』


僕はなぜだか沙織が
泣いてるんじゃないかと思い
顔を覗き込もうとした。

その瞬間沙織は一歩前に出て
空を見上げる。


「惣太、私カラオケ行って来る。まだみんないると思うし。
じゃあねぇ。」


沙織は僕を見ずに
明るい声で言うと
片手を振りながら走っていった。


『おい、沙織……』


沙織は僕の声に振り向かない。
僕は遠ざかって行く
沙織の背中を
じっと見つめていた。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
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