わがままなキッス☆ 【短編】
僕は12年前の
あの日の事を思い出す。


『あの時したじゃん。』


「なんのこと〜覚えてない。」


沙織は明らかにとぼけている。


「ほら、キスしてくれないと
惣太と結婚してあげないよ。」


沙織は楽しそうに笑ってる。
僕をからかってるようだった。


きっとこんな大勢の前じゃ
できっこないと思ってる。


僕は沙織を睨みつける。


「睨んだってダメ……っ!!」


僕は沙織の隙をつき
強引に引き寄せキスをした。


周りから冷やかしの
声が聞こえる。


少し長めのキスを終え
唇をそっと離す。

沙織はぼーっと僕を
見つめていた。


『ざまあみろ。』


その声にはっと我に返る沙織。


『約束は守れよ。』


僕は耳元でそっと囁いた。


「もう一回して…」


『はぁっ!?』


「してくれなきゃ結婚しない。」


『どんだけわがままなんだよ…』


僕はため息をつく。
きっとこの先
このわがままに
振り回されると思うと
先が思いやられる…。


沙織を見ると
大きな瞳でおねだりするように
僕をじっと見つめている。


かわいい…


僕は沙織の肩に手をかけ
そっと引き寄せる。


電車がホームに着き
人の波が押し寄せてくる。


それでも僕たちは
気にもとめずキスをした。


沙織のわがままなキッス。
そして…約束のキッスを…。



***【END】***
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