院内恋愛(旧:恋の階段*タイトル変更しました)
「帰りたい?」

ラグから立ち上がって近づいて来る。

「…」

帰りたくないけど帰りたい。

あっ、言っとかなきゃ

「あっ、あと今週の土曜日なんだけど、用事があって、えっと、希望休とってて、で、日曜が日勤だから、会えないです。」

『用事がある』というのは、都合の悪いときの、都合がいい言葉だと思う。

『用事がある』と言われてると、どんな用事かと聞き返すのはなかなか勇気が必要だ。裏を返せば、理由を言いたくないから、用事と濁しているわけで。

関係性が近しい人に対して程、用事と言わない気がする。

だから、私は蒼介に対して、用事と言ったことで、一線を引いてしまっているし、隠したいことがあると、自ら提示している気がする。

そして、大人な蒼介は、やっぱり用事については問いただしてはこなかった。けれど、大人なアプローチは仕掛けてくれた。

「週末会えないなら、ますます今日は一緒にいたいな。」

そう言って優しく覗きこんでくれる。

何も答えない私にさらにもう一押し。

「せっかく作ってくれたカレー、一緒に食べよう。」

そう言って、手を引いてソファに座り、足の間に抱え込まれて後ろから抱きしめられる。
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