甘いペットは男と化す
 
「知らないって……」

「俺が知っているのは、自分がケイという名前だということ。
 それと………

 この家に見覚えがあるってこと」


「え……?」



ぐるりと部屋を見回して、確かにそう答えている。


部屋に見覚えがあるって……
でもあたしは、ケイなんて知らない。


「マンションと、205号室という覚えがあるってだけだから……
 多分、アカリのことは知らないと思う」

「そ…っか……」

「だから記憶を頼りに、ここに来てみたけど……
 やっぱ何も思い出せないんだなって」

「……」


いわゆる、記憶喪失……だろうか。

それならなお、こんなあたしの部屋にいるわけには……



「病院……行ったの?」

「うん。けど、ほかに異常ないし、昨日退院した」

「お家の人は?」

「……」



踏み入っていいのか、いけないのか……。

その質問には答えない。


いや、でも……。

 
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