甘いペットは男と化す
 
「ケイ、お風呂空いたよ」
「……」
「ケイ?」
「あ……うん。わかった」


夕飯を食べ終え、先にお風呂に入ってからケイを促す。

今回の返事も、生返事だった。


今日のケイはなんだかおかしい。
今朝は普通の様子だったけど、帰ってきてから完全に何もかも上の空のような気がして……。


記憶のこと、何か発展があったんだろうか……。


気にはなるけど、記憶を取り戻すことで、なんだかケイが苦しんでいることが多いせいか、自分からそれを切り出せずにいた。


ケイがお風呂に入っている間、恒例となっているパソコンで適当にメールチェックやネットサーフィンをして、時間を過ごす。
しばらくして、いつもより少し長く入っていたケイがお風呂から出てきた。


「また、髪の毛そのままなんだから……」
「ごめん……」
「ほら、こっちにおいで」
「……うん」


相変わらず、髪の毛からぽたぽたと滴を垂らしながら出てきたケイを呼んで、肩にかけていたタオルでケイの髪を拭いた。


あたしより一回りほど大きい背中。
華奢に見えるけど、やっぱりその体は男の体で……。


なんだかドキドキと、こっちの胸が高鳴ってきた。
 
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