甘いペットは男と化す
 
「じゃあ、また月曜日」
「はい」


マンションの前について、一人タクシーから降りた。

もちろん、矢代さんから「やっぱり寄っていい?」なんて言うことはなく、一言挨拶だけ。


タクシーが見えなくなるのと同時に、マンションへと向きなおそうとした時だった。




「おねえさん、ここに住んでるんだ?」


「え?」




まさかのその声に、驚きながら振り返ると、
そこにはもう会いたくないと思っていた彼がいて……



「矢代さんだっけ?付き合ってるの?」



何食わぬ顔で笑うその微笑みは、やっぱり同一人物とは思えない。


「……あなたには関係ないでしょ」


怒りなのか悲しみなのか、分からない感情が沸々と湧きあがって
だけど冷静を保ちながら、彼の横を通り過ぎようとした。


「ねえ」


だけどそれを許すまいと、彼があたしの腕を掴む。




「今日、泊めてくれない?」


 
< 157 / 347 >

この作品をシェア

pagetop