甘いペットは男と化す
まだ、ケイと一緒に住んでいたころ、あたしが仕事中部屋の出入りが出来るように合鍵を渡していた。
思えば、ケイは勝手に部屋を出て行ったけど、鍵を返されたりはしていない。
「あ、やっぱりおねえさんの部屋のなんだ?」
「…っ」
しまった…。
今のは、試してただけだったんだ……。
確かに、記憶がないときのことを覚えていないのなら、その鍵があたしの部屋のだとは知っているはずがない。
「……でもなんで……ここのマンションのだって分かったの…?」
「んー……。それは俺が、このマンションに縁があるから、かな」
「え?」
よく分からない返し。
でも思い返してみれば、ケイは最初から、このマンションの…あの部屋に何か思い入れがあって部屋の前で待ち伏せていた。
だからあたしではない、別の誰かとの思い出に、このマンションがあるのかもしれない。
「ねえ、承諾されて部屋に入るのと、
夜中、おねえさんが寝静まってから侵入するの、どっちがいい?」
小悪魔な微笑を浮かべた、最悪な質問。
「………勝手についてくれば」
あたしに、この子を追い出す選択肢なんか、最初からなかったんだ。