甘いペットは男と化す
 
「勘違いしないで。
 あたしが好きになったのは、記憶をなくしてたときのケイだよ」

「でもその時の俺も今の俺も、同じ俺でしょ?」

「……」


それを言われたら、何も言い返せない。


確かにそうで……
自分でも言った記憶がある。

記憶を取り戻したって、あたしが好きなケイには変わらないと……。

でも……


「あなたが覚えていないんだったら、話はべつだよ」


ケイは、あたしの存在すら覚えていないんだから……。


ケイはそれ以上、何も言わなくて
二人の間に沈黙が流れた。


「あ、たし……菅野ちゃんのとこに………っ」


沈黙に耐えられなくて、席を立とうとしたら、それを制するように腕を掴まれた。

振り返ると、ケイがじっとあたしを見上げていて……



「ダメ。ここにいて」



意味も分からず、あたしの手をぎゅっと掴んだ。
 
< 176 / 347 >

この作品をシェア

pagetop