甘いペットは男と化す
 
「ケイ……
 なんで……」

「確かにあの時、俺はアカリを好きになったよ。
 あの時の俺には、アカリがすべてだった。
 真っ白な状態の自分は、何の抵抗もなしにアカリに惹かれた。

 けど……」


抱きしめられていたはずの腕は、緩められ、ゆっくりと引き離される。

覆いかぶさる体勢のまま
ケイは離れたあたしの髪をかきあげた。



「今の俺は、アカリを愛せない」



揺らぐことのない瞳。

変わることのない言葉。


あたしの胸をえぐるように、ぐさっと刺さっていく。



「どう…して……?」

「俺にそんな資格なんてないから」



聞かなくても、勝手に頭の中に思い浮かんできた。

一人の女の人の存在。


沙樹という彼女。


ケイには、あたしと出逢う前に、心から愛した人がいる。
 
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