甘いペットは男と化す
「どうもこうも、御社の社長から聞いてないのか?
景から離れろと警告したはずなのに、それをやめないからじゃないか」
「それは一回、なくなった話じゃないですか」
「なくなってはいない。待ってやっただけだ」
「待ったって……。何を?」
「それは君には関係ない」
自分の話のはずなのに、関係ないとスパッと切られる。
確かにケイの言っていた通り、話が通じない人だ。
あたしともそりが合いそうにない。
「そもそも、この年になって息子の恋路に口を出すこと自体おかしいんじゃないですか?」
「この年だからだ。もうフラフラと遊んでいられるような年ではない。
あいつの結婚相手は、私の会社の将来も関わってくるんだ。そんな遊び心で決められたらたまったものじゃない」
腹の立つ言い方……。
これじゃあまるで、子どもが親の人形だ。
「私の言うとおりにしているのが、一番景が幸せになれる道だ」
「なっ……!!」
「アカリ!?」
あまりにもカチンときて、言い返そうと大口を開けた瞬間、
後ろのドアが開けられ、名前を呼ばれた。
振り返るとそこには、ケイが立っていた。