甘いペットは男と化す
 
「もういい。やっぱり、アンタのところには世話にはならない」

「また逃げるのか?」


あたしの手を取って、社長室から出ようとするケイに、お父さんが失笑交じりで話しかける。


「お前はいつも、中途半端だな。
 そんなだから、前の女にも金で見捨てられるんだ」

「う、るせぇっ!!」


ドカッ!と大きな鈍い音が鳴り響き、それと同時にケイのお父さんが床へと倒れこんだ。

ケイは怒りにまかせて、父親を殴ったらしい。


「ふっ……。そうやって、すぐ手が出るところもまだまだ子供ってことだ」

「っ……」


殴られたお父さんは、血がにじみ出た唇をぬぐいながら、ゆっくりと立ち上がった。


ケイよりもいくらか背の高いお父さん。
それだけじゃない威厳。



「俺を負かしたいのなら、頭脳で力をつけてくるんだな」



最後の言葉にはケイは何も言い返すことはできなくて
あたしの手を取って、社長室から出た。
 
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