甘いペットは男と化す





「くっそっ……腹立つっ……」


オフィスビルを出て、悔しそうにケイが言葉を吐き捨てた。

その顔は悔しさで滲み溢れていて、声をかけるのもためらわれる。


ケイが悔しいと思っているのは、きっと自分が今まで頑張ってきたから。
お父さんに出された条件を果たそうと、必死にこの1か月走り回ってきたから。

だからそれを、中途半端に扱われ、
さらに追い打ちをかけるかのように沙樹さんのことを口に出され……


「……」


タクシーで隣に寄り添いながら、重ねられている手をそっと握り直した。




何も言わずに、自然と着いたのは、あたしの部屋。

部屋に入るなり、ケイはぎゅっとあたしを抱きしめてきた。



「ケイ……?」


「二人で……駆け落ちしようか……」



それは、突然の言葉だった。
 
< 288 / 347 >

この作品をシェア

pagetop