甘いペットは男と化す
 




「……ん…」


夜中、ふとした部屋の冷気を感じて、目を覚ました。

うっすらと瞼を開けると、変わらない暗い部屋。
だけど頬をかすめる、冷たい風。


体を起こすと、ソファーで寝ていたはずのケイの姿はなくて、
冷気の正体となる窓が開いていて、その先に小さな背中が見えた。


こんな夜中に何やってんの……。


気になって布団から出ると、やっぱり寒い。
ルームシューズだけ履いて、ケイのいるベランダへと向かった。



「………キ…」



なんとなく聞こえた、かすれた声。

それがなんて言っているかまでは聞き取れなかった。


「ケイ……?」
「っ!?」


その背中に向かって声をかけると、驚いたように振り返ったケイ。

だけどその顔を見て、あたしも言葉を失った。


ケイの頬には、一筋の涙がつたっていたから……。
 
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