吸血鬼の翼
「お腹空いたなぁ~コイツ等、食べても良い?」
紫の髪の男はバルと言われていた青年に気怠そうに言う。
その言葉が指しているのは言うまでもなく、ラゼキとソウヒに向けられている。
この男とバルの耳先は尖っていた。
それは間違いなく、半獣人だという証拠。
…確かに半獣人の中には肉食の者もいる。
ソレを実際、過去に見ていた2人の額からは汗が滲んでいた。
「……俺等に一体、何の用やねん。」
ここで漸く、ラゼキが男達に尋ねる。
すると男はまた可笑しそうに笑い出した。
「アハッ!そんな事、もう分かってるよね?」
男の口から出た言葉は下らない事を聞くなとでも言いたいかの様な皮肉じみた答えだった。
勿論、大凡(おおよそ)の見当はついていたのだが、ラゼキはちゃんと確認をしたかったのだろう。深い溜息を吐いた。
「…せやったら、ここから先は行かせられへんな。」
「ふぅん、遊んでくれるの?」
言葉とは裏腹に見下した態度はどうも癪に障るがそんな事を思う余裕も今は無い。
ラゼキは呪文を詠唱すると手の平に光を集め出した。
「……っ」
すると小さな呻き声が耳に入って来る。
隣には先程、妙な糸で捕らわれたソウヒが苦しそうに顔を歪めている。
いつの間にか、その糸にソウヒはキツく縛り上げられていた。
それを察したラゼキは呪文の詠唱を止め、魔法は中断された。
「やっと、分かったの?キミ達は僕に抗えないよ。」
男のけたたましい笑い声が辺りに響き渡る。
とても厭な声。
何もかもに障る。
「…コイツ等はオレが引き受ける。」
今まで黙っていたバルが男にそう言うと前に出て先を促した。
分かったよと拗ねた様に口を尖らせた男は木の枝から降りる。
その状況に思わずラゼキは男へ手を伸ばすが、ソウヒの事が過ぎり後を追えない。
「さぁ、どうしてやろうか。」
金の瞳は妖しげに鈍い光を宿している。
ラゼキは歯を食いしばりながら拳を握りしめた。