吸血鬼の翼
「クラウの仲間なんか?」
男が去った後、ラゼキは改めてバルに問うた。
それに対して冷たい視線をラゼキに向ける。
「仲間ではない、一時的に手を組んでるだけだ。」
「………。」
忌々しげに言うバルを見れば、それはどうやら本当らしい。
人間と半獣人。
今更だが、この世界、キュルアスにとっての常識は互いに相容れない者同士なのだ。
きっと、その下ではラゼキ達は異様に映るのだろう。
「お前達はオレに尋問出来た立場ではないだろう。」
「…せやったな。」
隣のソウヒを見れば、糸から抜け出そうと苦しそうにもがいている。
そして突如、強い風がラゼキ達とバルの間を吹き抜けた。
その風に一瞬、目を瞑ったバルの目の前には先刻、捕らえた筈のソウヒが居た。
どうやら、糸は解けた様だった。
ソウヒは壊れた窓枠にバランス良く足を掛け身軽にバルを的にして跳躍する。
ソウヒは握った拳をバルの鳩尾目掛けて放つ。
だが、寸前の所で躱されてしまい虚しく空を切るだけに終わった。
「…まさか、さっきの魔法は…」
「察しがええやん、せやで。さっきの魔法は糸を溶かす光の為のフェイクやったんや」
もしかして、最初から、オレを1人にさせる為に―?
相手の策に嵌った事を理解したバルは舌打ちをして、ラゼキを強く睨む。
その反応に口角を上げて笑うラゼキは再び、違う呪文を唱え始めた。