吸血鬼の翼
男の瞳は夜行性の動物の様に紅く光っていた。
その瞳は逃すまいとしっかり、イルトを捕らえている。
男の持つ、独特な雰囲気に気圧されてしまい、イルトは汗を額に一筋かいた。
「まだ分からないの?」
「……?」
男は鼻で笑う様な皮肉った声でイルトを促す。
言葉の意図を読めないイルトはただ男の顔を訝しげに見やる。
男はそんなイルトの様子に呆れて溜め息を吐く。
すると突然、イルトの首を片手で素早く握り締めると軽々と持ち上げた。
「…かっ…は…」
「アハハッ!馬鹿な赤子!僕が“誰”だか、まだ理解出来ないの?」
男はイルトに間を与えず罵る。耳障りな笑い声は辺りに反響していた。
その声に比例して、首を握る手に容赦なく力を込められる。
クラウは事の成り行きを黙って傍観していた。
体内に酸素が回らなくなったイルトの意識は次第に薄れていく。
その様子を見ていた男は、つまらなさそうに首を握っていた手を緩ませ、イルトをぞんざいに地面へ投げ捨てた。
「…仕方ないなぁ、見せてあげるよ。そうすれば分かる筈だからね。」
男がそう言うと勢い良く、何かが開く音が咳き込むイルトの耳に入る。
ソレは月明かりを遮断し、視界に広がるモノはイルトの目を釘付けにした。
「……!」
イルトと同じ特徴を男は持っている。
つまり、吸血鬼特有の羽が男の背中から生えていた。