吸血鬼の翼
紅い瞳に羽…間違いない、コイツはリンドリアールの出身者。
俺と一緒の吸血鬼。
但し、彼は純粋の吸血鬼の様だが…
あの時に街も一族も壊滅したと人々から聞かされていた。
無論、あの惨状を目の当たりにすれば、そうなるだろう事は安易に予想は出来た。
だから、もう自分の種族とは会わないだろうと思っていた。
もし、生き残っていたとしても、会えるとは考えていなかった。
…自分への復讐以外は。
これは間違いなく、その類いのモノだと悟るまでもない。
「“アレ”から何年振りだろうね、赤子…」
「……生き残っていたのか。」
イルトは重い口を開くとニッコリと男は笑っていた。
それは機械的な笑みで、事実、彼の瞳に宿る憎悪がヒシヒシと伝わって来る。
「知らない内に殺されるのも可哀想だから、僕の名前を教えてあげるよ。」
まるで、男の決定事項の様な口振りにイルトは思わず額に汗を流した。
「僕の名はロヴンだよ、赤子」
「……ロヴン」
イルトはオウム返しの様にロヴンと名乗った男の名前を呟く。
言葉に出してみると、酷く懐かしい、妙な気持ちになった。
もしかして、会った事があるのだろうか…?
「オイッ仲間が死んでるじゃねぇか!俺達は大丈夫じゃなかったのかよ!!!」
気になって、イルトが口を開こうとするが、それは別のものによって遮られてしまう。
ロヴンの背後を見るとそこには野鳥の半獣人が地上へ着地した姿が目に入った。
その半獣人は他の半獣人に比べて、巨大な体と羽を持ち、威厳を感じさせる。
恐らく、この半獣人が焼身した野鳥の頭と言った所だろう。
「テ…テメェ!人間じゃなかったのか!!?」
ロヴンの姿を見て驚愕した半獣人は大声を上げる。
どうやら、ロヴンが半獣人だと言う事実を知らなかったらしい。
大きな足が地面を踏みしめる度に地鳴りがしているみたいに辺りは揺れていた。
その足は段々と此方へ近づいて来る。
そんな状況にも関わらず、ロヴンは平然としていた。
そればかりか、不愉快そうな表情まで浮かべている。
「さぁ?そんな事、言ったかなぁ?それに今更、気付いても手遅れだよ。」
「おのれぇっ殺してやる!!!」
白々しい態度を見せるロヴンに遂に癇癪を起こした首領はロヴンの頭上目掛けて拳を振り下ろす。
鈍い音に思わず、瞑目したイルトだったが、暫くして開いてみると首領は腹部を貫かれた無惨な姿に変わり果てていた。