吸血鬼の翼




「…殺すなよ、ソイツにはまだ用事がある。」

傍観していたクラウがロヴンの背後で釘を差した。
それに反応して、ロヴンがクラウを見るとニッコリと人懐っこい笑みを浮かべる。

禍々しい雰囲気と穏やかな表情の差違に思わず、クラウは冷や汗をかく。

「分かってるよ、ちょっと遊ぶだけだから」

その瞬間、笑みは消え失せ、変わりに凍り付く様な冷たい表情を作った。

イルトはリリアに結界を張った後、ロヴンと向き合う。

「さぁ、遊戯の時間だよ、何して遊ぶ?」

イルトが構えた次の瞬間、向かいに立っていたロヴンの姿が煙の様に消えた。

「…ぐあっ…」

気配を探ろうとした矢先、後ろから、鋭い痛みに襲われる。
下を見ると右太腿が鋭利な刃の様な物で貫かれている。
いつの間にか、ロヴンはイルトの背後に回っていたのだ。

「鬼ごっこのつもりだったんだけど、もう捕まえちゃった!ノロ過ぎだよ…赤子。」

逃がすまいとして、ロヴンの左腕がイルトの首に巻き付く。
ロヴンは首をへし折るくらいの勢いで腕に力を込める。
窒息する所で貫いていた物を抜き取った。

「うわぁあああぁあ!」

抜いた部分に親指くらいの大きさの穴が出来、そこから血が噴水の様に溢れ出る。
回していた腕を解いたロヴンは足でイルトの背中を蹴落とした。

ブーツでイルトを踏みつけながら、刃物…否、伸ばした長い爪を4本バラして手に取った。

「次は“的当て”で遊ぼっかなぁ!」

まるで、本当に子供の遊びみたいに燥(はしゃ)ぐ姿は周りからすれば異様な光景だ。

そして、イルトの四肢を“的”にして自分の長い爪を投げ刺していく。

途切れないイルトの悲鳴をロヴンはクラシック曲を聴いている時に似た、うっとりとした表情を浮かべる。

身動きが取れなくなったイルトはされるがまま、拷問めいた“遊戯”を余儀無くされた。


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