吸血鬼の翼



『だれも、みづきなんて“ひつよう”としてないんだよ』

そう言葉を発した女の子の瞳は変わらずに虚ろだった。
美月の額からは汗がじんわりと滲む。

私は必要とされてない?

『だから、みんな‥はなれていっちゃうんだ』

イルトもラゼキも…皆、私を置いていく

女の子の声が美月の頭の中で反響して痛いところに染みる。
思わず、その場から後退りをして首を激しく左右に振る。

「や‥めて、違う!聞きたくない!何でそんな事、言うの!」

美月は涙声になりながら、女の子から放たれた言葉を否定する。
それにこの子と居るだけで頭が割れる様に痛い。
近づきたくない!
更に数歩、後ろに下がった美月の足は震えていて覚束ない。

「貴方は誰なの‥」

美月は未だ正体不明の女の子にそう問いかけた。
すれば女の子の口角がつり上がる。

『わたし?』

クスクスと嘲笑気味に笑う女の子に益々、恐怖が募った。

一体、この子は誰?

女の子が口を開こうとしたその時、真っ暗だった空間に美月と女の子の間から眩い程の光が発生した。

「な、に…眩しい!」

『ばいばい、またね』

強い光に片手で両目を覆うがそれでは間に合わず、チカチカと美月の視界を邪魔する。

漸く慣れた頃には目の前が光に包まれていて、女の子の姿が朧気になっていく。
そんな周りの変化に思わず、美月は女の子へ手を伸ばした。

「待って…!まだ私…」

必死になって手を伸ばすが、その手は遂に女の子へ届く事はなかった。


< 143 / 220 >

この作品をシェア

pagetop