吸血鬼の翼




あれから美月と佐々木は各々、教室に戻り授業を受けていた。
保健室に千秋を預けている事で安心はしたが、気になって授業の内容が頭に入って来ない。

虚ろになった瞳に異様な言動。何時もの千秋とは全く違う別人みたいで今でも内心、戸惑っている。

怖いけど、千秋は私の大切な親友なんだから傍に居てあげなきゃ。

そう自分に言い聞かせて、弱気になっている気持ちを払拭する。

佐々木君だって放課後、一緒に千秋を迎えに行ってくれるって約束もしてくれたし、大丈夫。

少し、安堵すると急激に眠気が襲って来た。
授業だからと頑張って目を開けるも、強い睡魔が押し寄せてそれを呆気なく流す。
視界に映る黒板の文字が次第に霞んで来る。

目を開けてられなくなった美月はとうとう机に突っ伏してしまった。




…………づき…



え?誰…

優しい声。
初めて聞く様な、懐かしい様な



起き…て……


何なの?



君の大切な人が………危ない



えっ…それって…

「……きろ」

「ん…」

「起きろ、篠崎!」

「え!?」

強い声の調子で呼ばれた美月は弾かれた様に机から顔を上げる。
まだ、頭がぼんやりするがどうやら授業は終わったらしく周りに人の気配は既になかった。

放課後になるまで、ずっと寝てたんだ。

美月の目の前には佐々木が立っていた。
どうやら、美月を起こすのに手を焼いた様で呆れた様に顔を歪めていた。

「ご、ごめん!千秋を迎えに行こうか」

「ああ、アイツ…大丈夫かな。何か普通じゃなかったけど」


我に返ると申し訳なさや寝ていた事を見られた妙な恥ずかしさから、美月は慌てて席を立つ。

しかし、そんな美月の様子等、眼中にないのだろう。
佐々木の表情は千秋を保健室に送った後と変わらず、懸念の色で曇っていた。


< 157 / 220 >

この作品をシェア

pagetop