吸血鬼の翼
教室から出る為に千秋の鞄と自分の鞄を手に持ち、佐々木と一緒にその場を後にする。
マフラーを巻いて、階段を降り始めると妙な気分になって来た。
心なしか体中の細胞が騒いでる気がする。
嫌な寒気を背中に感じたり、鳥肌が立ったり。
その所為か心臓が早鐘を打っている。
早く早くと急かされているみたいな…
「……っ…」
突然、美月の頭に鋭い痛みが走った。
まるで警鐘が鳴っているみたいでズキズキと頭の痛みが膨れ上がる。
「篠崎、大丈夫か?」
先に階段を降りていた佐々木は美月の異変に気付く。
慌てて駆け寄る佐々木に心配を掛けまいと努めて笑顔を作った。
「大丈夫…平気だから」
「平気って面じゃねぇよ…無理すんな」
安心させるつもりが、佐々木から返って来たのは叱りの言葉。どうやら見抜かれているみたいで演技が通じない。
思わず、苦笑を漏らした美月はごめんとだけ謝って先を促した。
「今は私の事より、千秋の方が心配だよ。早く行こう」
「ああ、そうだな…」
未だにズキズキと痛む頭を無理やり無視していると先程、夢で聞いた声が頭を過ぎった。
そういえば、何か私に警告しようとしてた…
大切な人が危ないって
まさか!
そこまで思考を巡らせると不思議に頭の痛みが消えていく。
美月は焦燥感に駆られて、思わず走り出した。
早くしないと間に合わない気がする。
私の大切な人が消える!
目尻に涙をうっすら浮かべながらひたすら走る。
佐々木は唐突な美月の行動に妙だと思いつつも、それに続く。
保健室のドアを勢い良く開けるとそこには保健の先生しか居らず、千秋の姿は何処にもなかった。