吸血鬼の翼
「どうして…」
「コラ、篠崎さん!此処は保健室よ、もう少し静かに入りなさい!」
呆然とする美月を保健の先生、椎名が捲し立てた。
無論、その叱咤は全く美月に届いていない。
そこで佐々木も辿り着くと怒られている美月が目に入り、2人の間に割り込み椎名を緩く制止する。
「まぁまぁ、椎名ちゃん。大目に見てよ。」
「先生をちゃん付けで呼ばないの!佐々木君……それより、どうしたのよ?」
その場を丸く治めた佐々木に椎名は血相を変えた美月を見つめながら問う。
佐々木は保健室のベッドに千秋が居ない事を確認すると美月の肩に手を置いた。
それに気付いた美月は振り返り、佐々木の横顔を眺めた。
「佐々木君?」
「なぁ、椎名ちゃん!千秋帰ったのか?」
美月の呼び掛けに応える事なく、佐々木は椎名に千秋の消息を聞く。
「國府田さんなら、ついさっき保健室から出て行ったわよ…そういえば何か妙な事言ってたわね…」
「呼んでるって?」
佐々木の問い掛けに椎名は眉間に皺を寄せながら、「そうも言っていたけれど」と瞑目しながら思い出すのに難しい表情を浮かべる。
「確か、“行かなきゃ、あの人の元へ”とか何とか言ってたわ、…國府田さんって恋人とかいるの?」
「……違う」
そんな人、今の彼女には居ない。
本人は否定しているけど、佐々木君の事を好いている筈だ。
それに“あの人”って誰?
千秋の奇怪な言動を知った美月は椎名の憶測を呟く様に否定するとその場を走り去った。