吸血鬼の翼




「何か可笑しくねぇか?こんな高ぇビルあったら遠目からでも、普通気付くよな。」

「うん、そうだよね。」

「………。」

美月と佐々木は廃ビルに視線をやったまま、訝しげに会話をする。
確かに変だ。
いきなり、フッと湧き出た様にそこへ存在している高いビルなんて…
しかも、閑散としたゴーストタウンに近い町には少し疑問が残る。
人の少ない町にわざわざ大きなビルを建てるのが妙に頭に引っ掛かった。

イクシスは困惑気味の2人を後目に淡々とビルの入り口へ向かって歩いていく。

「マジかよ」

「……千秋がいるなら私は行く」

入ろうとしているイクシスに佐々木は引きつった表情を浮かべる。
美月は戸惑いながらも、親友の事を思い、ゆっくりとイクシスの後を追った。
大丈夫だと自身に言い聞かせて。

「…チッ」

そんな2人に佐々木は少しでも恐怖を感じていた自身に舌打ちして走ってビルに向かう。

イクシスが入口に足を踏み込み、それを追う美月も又、中へ入る。
すると、その入口と外との境界で妙な感覚を覚えた美月は不思議そうに辺りを見回す。

何だろう…この感じ…

まるで違う次元に入った様な

この変な感覚は自分だけが感じているだろうかとイクシスの表情を窺いたかったが、自分の前へ歩いてる為にそれは出来ない。
それに明かりもない暗がり場所で今居る場所も朧気だ。

「暗いね。」

「そりゃ、廃ビルだからな…」

3人は長い廊下を慎重に歩いていた。
割れた窓硝子の向こうからは生暖かい風が吹いている。
その風はビル内の物を不気味な音で鳴らし、より一層恐怖を煽らせる。
如何にも出そうな雰囲気に美月は半ば挙動不審になってしまう。

周りを見渡せば、表面から見たビルと同様、中の窓も破損していて硝子が床に四散している。

それを出来るだけ避けて歩くのに時間をとられてしまう。
一刻も早く千秋を救い出したい美月と佐々木は内心、焦燥感に駆られていた。


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