吸血鬼の翼

怖い…何なの…
やっぱり、ラゼキ達は無事じゃないの?
先刻より、扉の向こうから激しい轟音が耳へと届いていた。普通の人が喧嘩をする様なレベルじゃない事くらい美月にも分かっている。
ソレが今ではパッタリとなくなっていた。

ラゼキ、イクシス君…

美月は恐怖と不安で体が震えている。
それを何とか抑え様として膝を抱えるも、ガチガチと震えるばかり。

横を見れば、今も意識の戻らない千秋。
疲れが出たのだろうか先刻まで起きていた佐々木も深い眠りに落ちていた。

きっと、千秋の姿を見て緊張の糸が切れたのだろうと美月は頭の片隅で思う。

いっそ、私も眠ってしまえたら良かった…

ううん、違う。
そんな事、考えちゃ駄目だ。
2人と此処にいる少女達は私が守らなきゃ…

眠ってしまったら、きっと助けられない。

美月は恐怖心を取り除こうと懸命に勇気を振り絞る。
そうでもしないと負けてしまいそうになるから。
臆病な自分に。

美月は膝に顔を埋めているとイルトが頭に思い浮かんだ。


ねぇ、貴方は今どうしてるのかな?

まだ、別れた時の悲しい顔のまま?


もう一度、あの笑顔を見たい。
素直に笑う表情を。

会いたい…会いたいよ。

美月が瞳を固く閉ざしていると、不意に扉の軋む音が聞こえて来た。
そして、誰かがこの中へと入って来る足音。
ラゼキ達、無事だったんだ!

「ラゼキ!イクシス君!」

何故かそう思い、期待を膨らませて膝から顔を上げる。
信じたい、信じたかったのだ。
見上げるまでの一瞬を。
ハッピーエンドという光を。
しかし、目の前には希望の形を見出せない人物が立っていた。
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