吸血鬼の翼
気絶したイルトを背中に背負いながら、ラゼキは帰路へと足を進めた。
美月も遅れながら、ラゼキの後に続く。
やっと並んで歩けた美月は遠慮がちにラゼキの顔を覗き込む。
その視線に気付いたラゼキは美月を一瞥すると手の平で顔を覆い、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「すまんな、嬢ちゃん…」
そう小さく呟いたラゼキは片手で美月の頭を優しく撫でる。
唐突に謝られた美月はきょとんとした顔を浮かべた。
何をいきなりと言いたげな美月の様子に気付いたラゼキは彼女の腕をとる。
「コレ…痛かったやろ。」
「ああ、コレ」
ラゼキに引っ張られた腕を見ると赤くなっていた。
しかし、痣にはなっていない様だ。
小さく笑う美月を見てラゼキは不思議そうな表情を浮かべる。
「気にしてないよ、私達が悪かったの。」
「やけど…」
美月の言葉に反論し、続けようとしたがその気力をなくして珍しくラゼキは肩を落とし元気をなくしていた。
美月は落ち込むラゼキを横目に背負われているイルトへと視線を移す。
とても疲れた顔をしている。
でも、どこか安心して眠っている様にも見えた。
「イルトはラゼキの事が好きなんだね…」
「何や、急に??」
美月は慌てるラゼキに再び小さく笑った。
「だって、イルトは貴方に甘えてる…そういうのって凄く羨ましいなぁっと思って。」
甘える事は凄く勇気のいる事だと思う。
少なくとも私にとっては…
元々、人と接したりするのは得意ではない。
寧ろ苦手な方だ。
こんな風に誰かを想えるなんて凄いと思う。
…私はそうじゃなかったから
だから、貴方達が羨ましいんだよ…。