吸血鬼の翼
礼拝堂から部屋に戻ると、やけに物静かで寂しい。
だけど、今の自分には、誰とも話しする気力はなかったので丁度いいのかもしれない。
─消失事件。
消えた人々の村の周辺には血の匂い。
その言葉がイルトの頭から離れない。
まるで、呪縛を掛けられたみたいに自分の心が囚われている。
ルイノは大丈夫だと何も心配は要らないと言ってはくれたが、言い知れぬ不安は拭い去れなかった。
自分の今の気持ちが杞憂に終わればいいのだけれど。
しかし、それとは裏腹に叶わないのだろうと心の何処かで思っている。
それに、被害はこのコトラリス国まで及んでいるのだから、避けて通れないだろう。
むしろ、得体の知れない何かから追われている気さえするのだ。
この厭な感覚は“あの時”と酷似している。
イルトは自室の寝台の上で膝を抱えながら、目を伏せた。
このまま、眠ってしまえば、忘れられる。
胸騒ぎも不安も恐怖さえも─。
イルトはそう信じたくて、睡魔に誘われるまま横になろうとした。
すると、不意に扉を蹴飛ばす様な激しい音がイルトの自室に響き渡った。