吸血鬼の翼



一陣の風が吹き、俺とクラウの間には緊迫した空気が張り詰めていた。

イルトはそんな2人の様子にただ動揺するばかり。

「テメェ、1人かよ。」

俺が軽く睨んでも、堪えてないのかクラウは眉1つ動かさないで構える。
いつ斬り込まれても、おかしくない状況に俺よりイルトの方が焦っていた。

「ソウヒ…」

「大丈夫だって!少しは俺を信用しろよ。」

不安が滲み出ているイルトの表情を見て、大袈裟に笑ってみせた。
少しでも、安心させる為に。

「…余裕だな。」

クラウは地面から跳躍して、凄い速さで間合いを縮めて来る。一気に終わらせるつもりか、クラウは俺の首もと目掛けて短刀を振りかざす。

いきなりだったが、ギリギリ避けると後ろから空気を斬る音がした。

「ソウヒっ!!!」

イルトの叫ぶ声と血の流れる音を耳にした。
どうやら、深くはなかったみたいだが、首を切りつけられたらしく胸元まで血が滴っている。

視界が掠れて、体のバランスをなくし膝をついた。

その瞬間、また別の方向から風が頬を掠める感触がしてぼんやりした意識を少しだけ取り戻す。

いつの間にか、目の前には橙色をした髪と白いロングコートを羽織っている見慣れた人物が立っていた。

「何やってくれとんねんっボケ!」

怒りの表情を露わにするラゼキは今にもクラウを切り裂きそうな勢いで手の平に風を集めている。
人差し指が弧を描いた時、風は弾かれ標的を目掛け吹き荒ぶ。

「……っ…」

クラウはそれを跳んで躱(かわ)すも、横腹を風が刃の様に襲い服ごと身を切られよろめく。

それと同時に血を流していた俺はそのまま意識を失った。

後から聞いてみると、クラウはその場から退却したらしい。

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