realize
一瞬、息が止まるかと思った。

少し思いかけてた気持ちが
翔大くんの口からハッキリとした形になった。

私は思いかけてた気持ちを
驚いた勢いで急いで自分の中に沈めた。


「…何言ってんの?」

軽く笑いながら言おうとしたのに
言葉は消えるように漂い、きっと動揺は
隠せてないだろうと思った。


翔大くんは何を思って、
どんな意図があって言ってるの?


「いや、変なこと聞いてゴメンネー?
なんかさぁ、亜美香が変なこと心配するから、
由紀さんがそんなわけないのに、ね。」


いつもの冗談を言うように
翔大くんは早口にそう言うと、
水槽をまわり、私の横に立った。

そして、満面の笑みを浮かべると、

「じゃーん♪プレゼント!」

そう言い、可愛い小瓶に入った魚を
私の前に差し出した。


丸い金魚鉢のような小瓶に入った2匹の魚が
ゆらゆらと泳ぐ度に、尾びれが虹色に煌めいていた。


「昨日もちょっと話したけど、
もう仕事は終わらせようと思って。

これは俺の夢を叶えてくれた一番の協力者の由紀さんへのお礼だよ!」


翔大くん…


「今まで本当にありがとう。」


翔大くん…!


「由紀さんのお陰で、
俺のやりたいことが叶ったんだ…!」


私、やっぱり翔大くんが…


「もう十分だよ。」


泣いて子供のように
好きだと叫びたかった。

そしたら一緒にいてくれる?

ねぇ、…


…そんなこと、出来るわけなかった。

人の幸せを壊してまで
自分の想いを伝えるなんて卑怯だ。

翔大くんには亜美香さんがいる。


「可愛い魚だね」

どうか泣きそうな私に気づかないで…



「餌やらなくても生き続けるから
由紀さんでも飼えるでしょ?」

気づいても、気づかないふりをして…



「ヒドイ!翔大くんじゃないんだから
ちゃんと育てられるわよ。」

お願いだからいつものように
その笑顔で終わらせて…



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