きみが死ぬまでそばにいる
 
「聞いたよ? 彼のこと認知してないんだってね。おじいちゃんとおばあちゃんにばれるのが怖いんでしょう? 二人が知ったら何て言うかな。きっともうお金は貰えないね」
「……何が言いたい」
「自分だけが何のダメージも受けないで、わたしたちを引き離せると思わないでねってこと。そんなことしたら、絶対に許さない。わたし――何をするか分からないよ」

 父は祖父母へ自分のしたことをひた隠しにしてきた。彼らから多額の金銭の援助を受けている父としては当然のことで、わたしにとってはそれが唯一の武器だ。
 互いに秘密を握っている、だからこうした脅しに意味があるのだと――思っていたのに。

「お前に何ができる――あまり大人をなめるなよ」

 父は静かに言ったが、何故か有無を言わせぬ凄みがあって、思わず肌を粟立たせる。
 おかしい――だって、陸の母親はこれで黙ったんだ。当然のように、それがこの男にも通用するものだと――わたしは。

「認知くらいその気になればいつでもできる。戸籍を調べでもしなければそうそう分かるものでもなし……今までそうしなかったのは、単に念には念をいれただけだ。それに、お前は勘違いしているようだが」

 父は笑った。呆れ返ったように、嘲るように。
 
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