きみが死ぬまでそばにいる
 
「おじいちゃんもいるし、一日くらいなら大丈夫かも……」
「本当? 嬉しい!」

 瞬時に泉の顔が明るくなった。泉は部長に知らせなきゃ、と言って早速スマホを取り出す。

「みんな残念がってたから、喜ぶよ! 特に、椎名くんとか!」
「あ……そうなんだ。それは良かった」

 良かったって、何がだ。問題は何も解決してないっていうのに。江の島の誘惑に負けたわたしは馬鹿だ。
 平静を装って微笑んではいたものの、わたしの心は少しも穏やかではなかった。そしてそこへもう一つ、台風がやってくる。

「あと、一応報告なんだけど」

 それは少し恥ずかしそうに切り出した、泉の言葉だった。

「私、部長と付き合うことになったんだ」

 幸せそうに言った泉の前で、わたしはうまく笑えていただろうか。

「……ほんと? 良かったね、おめでとう。ずっと部長のこと好きだったもんね!」

 誰かがわたしの口を操って、心にもないことを喋っている――そんな気分だった。
 部長への恋心を打ち明けられてから、数ヵ月以上。こんな結末はいつだって予想していた。その時が来たら、友人として自分のことのように喜ぶつもりだった。
 だけどそれが、こんなに辛いなんて。
 
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