きみが死ぬまでそばにいる
 
 もう少し、とはどれくらいだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら、わたしは陸を避ける日々が続いた。
 学年が違うと、避けるということは容易く、気がつけばもう何日も陸の顔を見ていなかった。
 わたしが部活に行かないことを泉は訝しんだんだが、一緒に暮らしいている祖母の体調が悪いと言って押し通した。実際の祖母は、すこぶる元気だったけれど。

「ねぇ、紗己子。おばあさまの体調って、まだ良くないの?」
「え? ああ、おばあちゃんは……うん、あんまりね」

 ある日の昼食時、泉から投げかけられた問いに、わたしは言葉を濁す。
 なんとなくのしかかる罪悪感。わたしは祖母が今日も元気にカルチャースクールに通っていることを、知られないようにを祈るばかりだ。

「そっか。心配だね……」

 泉はわたしの家に来たことがあるから、祖母とも面識がある。だからあまり重病設定にするのは好ましくないのだが、祖母が回復したことにすると、今度は部活を休む理由がなくなってしまう。それも困るのだ。
 今、陸には会いたくない。どんな顔をすればいいか分からないし、告白の返事を聞かれると思うと気が重い。

「じゃあやっぱり、旅行も難しいよね」

 残念そうに泉に言われて、思い出す。
 気づけば、同好会の日帰り旅行が今週末に迫っていた。
 泉によると、行き先は江の島に決まったらしい。プランの提案者は、まさかの陸だったとか。
 それにしても、江の島か。行き先のセンスは……悪くない。どうしよう、ちょっと行きたい気がしてきた。
 
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