きみが死ぬまでそばにいる
陸はとても喜んで、わたしを案内した。予め相当に下調べをしたようで、何を見たいと言っても、迷うことなくわたしを導いた。
ここまでの気合いの入りようは、気まずいを通り越して逆に感心する。
そして一通りの展示を見終わると、わたしは「お手洗いに」と言って陸から離れた。「はい」と笑顔で言った陸は、まるで忠犬のよう。自分の行為が期待を持たせているようでなんとなく罪悪感を覚える。
今日、ちゃんと断ろう――と、この時はまだ、そう思っていた。
用を済ませて元いた場所に戻ると、陸の姿が見当たらない。しかし、代わりに知っている声が聞こえてきた。
「先輩、見て見て、あのクラゲかわいー」
幻想的なクラゲの水槽を指差してはしゃぐ泉。その傍らには、部長。二人は恋人のように腕を絡め、寄り添っている。そこはもう既に二人の世界。
わたしは咄嗟に、二人の後ろ姿から目を逸らした。
こうなることは、ずっと分かっていたはず。それなのに、この胸に押し寄せる感情は。
――ずるい。わたしだって、そこにいたかった。
運命はいつも、わたしの目の前に残酷な現実を突きつける。
父はわたしを愛さなかった。母はわたしを残して死に、好きな人は親友を好きになった。この虚しさは誰にも分かってもらえない。