きみが死ぬまでそばにいる
 
 わたしは、その場から無意識に逃げ出していた。
 それは単に二人を見たくなかったのかもしれないし、衝動的にどこか遠くに行きたくなったのかもしれなかった。

「あ――先輩!」

 少し歩いたところで陸に行き合って、わたしは幸いにも我に返った。
 こんな感情は、悟られてはいけない。大丈夫、笑える。いつものように。

「すみません……ちょっと売店行ってました」
「大丈夫だよ。何か買ったの?」
「手、出してください」

 陸は売店の袋からキーホルダーを取り出すと、わたしの手のひらにのせる。
 それはクラゲを可愛らしくデフォルメしたもので、光が当たるときらきらと光った。
 実物も確かに綺麗だった。だけど、思いだそうとすると、泉と部長の姿がちらついて邪魔をする。

「先輩に似合うと思って」
「いいの? ありがとう」

 いらない、なんて言えないから、わたしは少し眺めた後早々に鞄にしまいこんだ。

「クラゲと言えば、ですけど。クラゲの水槽のところで柏木先輩と部長がいて……あの二人、付き合ってたんですね。びっくりしました」

 今一番口にしたくない話題。見てしまったなら、話したくなるのはわかるけれど、心にもない笑顔でいるのはそろそろ限界だった。
 
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