きみが死ぬまでそばにいる
妬む、嫉む
 
 初めてのキスは大好きなあの人と――なんて、人並みに乙女な夢に憧れていた。そんな幼き日を今ではすっかり懐かしく思う。
 夢と現実、という言葉がある通り、やはり夢は夢でしかなかった。だからといって、初めて付き合った相手が血の繋がった弟だなんて、あの頃のわたしは想像もしなかっただろうけれど。
 とはいえ、あれから陸との交際は順調だ。何度かデートを重ね、これといった喧嘩もない。しかし、それは当然のこと。わたしはただ演じているだけなのだから。
 わたしたちは偽りの絆を深めていく。全てが思い通り――上手く行きすぎて、怖いくらいだった。



「ちょっと、紗己子! 私、すごいもの見ちゃったんだけど!」

 その日、泉は朝から異様にテンションが高かった。
 ホームルームが始まる前に、今日の予習をするわたしの机にやって来て、興奮したように言った。

「椎名くんって、天ちゃんと付き合ってるの?」

 声を落として、わたしの耳元で囁くような泉の言葉はそれなりに衝撃だった。
 天ちゃんとは、旅行研究同好会の三人の一年生部員の一人――天童美咲の愛称だ。その彼女が、陸と付き合っている?
 
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