自分勝手なさよなら
坂本くんが部長の物真似を披露したり、泉くんが出てくる料理にうんちくを垂れたりするうちに、時計は12時をまわっていた。

「あー!過ぎてるー!ごめん!
あらためて誕生日おめでとー!!!」
呂律の回らない寛子が気づいて乾杯を促すものの、ほとんど皆のグラスはもう空になっていた。

「今日はありがとう!さて、そろそろ終電だし帰りますか!」私が言う。

「えー、もう?!はやーい!」
「もう一軒行きましょう!!朝まで!」
若い衆は名残惜しそうだが、正直私はもう充分だと思っていた。

「皆で行ってくればいいじゃない。今日は本当ありがとね。」
その後皆が二次会に行くのか行かないのかは解らなかったけど、私は輪の中をすっと抜け、駅に急いだ。
寛子が追ってくる。

「あ~きっ。私も帰る!」
「寛子~今日はありがとね!内田くんとかいるからびっくりしたよぉ」
寛子と二人になると、気が緩み、自分も相当酔いが回っていることに気づく。

「でしょでしょ。なんか内田くん達から飲みたいって言ってきたから誕生会に呼んでみたの。」
「えー向こうから?真奈美はまだしも、私達おばさんとのんで何が楽しいんだろうね」本音がこぼれる。
「おばさんとか言わない!同い年なんだからっ」
「違うよ、もう34になったもん。」
「…じゃあ亜希だけおばさーん!」
「ちょっとぉー!」
駅までの道を寛子と、じゃれながら歩く。
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