自分勝手なさよなら

秋、突然のタイミング。

大手町にある、いわゆる、大手企業。
通販会社のコールセンター。
村松亜希、33歳。私はそこに派遣社員として働いていた。
実際に電話に出るオペレーターではなく、社内総括や、オペレーターの勤怠管理だとか、そういった事務のサポートである。

殆ど雑用のような仕事もあったが、私は今の仕事が気に入っていた。
大したこともしていないのに、皆が「ありがとう、助かるよ」と言ってくれる。
その優しい視線に、いくらか侮蔑を感じたとしても、既に結婚もしている私には、それすら心地よく感じていた。

「村松さん！悪いんだけど今からなるはやで会議資料の印刷お願いできるかな？」
そういって笑顔を見せる私の冗長の徳永課長は、女性社員からそこそこ人気のある、いわゆる「ちょい悪親父」だった。

結婚して子供もいるのに、公然と彼女との話をしてくるので、一部非常識…ととる社員もいるものの、総じて社内では評価の高い男だ。

「課長またですか？ギリギリのパターン。」